一路一会鉄道の旅・鉄路一会>青春18キップで廻る信州・北陸・飛騨の旅
   青春18キップで廻る 
  信州・北陸・飛騨の旅
 
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 糸魚川は日本海と信州、さらに首都圏を結ぶ大糸線と北陸の大動脈である北陸本線を結ぶ交通の要衝である。もっとも大糸線があの様子で、山を一つ隔てた東側の信越本線にその役割の9割以上を持って行かれている状況において、この糸魚川駅もやや寂しい印象を受けるのだ。
 糸魚川と言えば古くから北国街道と千国街道、さらに海運の要衝として賑わい、また越前松平家1万石の城下町として発展した町だ。あいにく駅から日本海は見えないが、その駅構内にひっそりと佇む赤煉瓦造りの車庫がひときわ目を引く。これはJR西日本糸魚川運転センター検修庫で、1912年12月(大正元年)に完成して以来、築90年近い代物なのだ。なるほど、訴えかけるように建っているわけだ。この稀少な建物は劣化も少なく文化財級の建造物なのだが、北陸新幹線建設の為に取り壊される事が決まっており、保存や移築運動がおこっている。壊してからは遅い。JR西日本の文化度が試される一幕だ。

 北陸本線の普通列車を待っている間にも、目の前を特急や貨物列車が行き交う。12:56発でやってきた北陸本線普通列車(552M)は白に水色の帯の明るいJR西日本北陸本線カラーだ。車両は国鉄時代に急行用車両として生まれた475系3両編成で、これもJRに残る最後の稀少な車両らしい。列車はいかにもな「モーター音」を唸らせながら力強く加速していく。この列車は富山止まりである。高岡までは乗り換えが必要だ。やはり、北陸本線の運行も細かく分断され、「各地域」の通勤通学路線に割り切っているのだ。旅行客は特急列車におまかせというわけだ。もっともそれは間違ってはいないのだけど・・・。

 かつて何度も行き来した国道8号線や北陸自動車道と併走し、時々窓越しに見える北陸本線には、いつか乗ってみたいと思っていた。国道8号線は親不知など海辺を走る区間は比較的スムーズに流れるものの、カーブやアップダウンが多く、黒部以西は中規模都市の市街地を貫く為に、その往来は非常に難儀する。したがって列車の方がはるかに快適そうに見えたのだ。北陸本線は複々線化にあたって、そのルートの大半をトンネルに換え、それゆえに海の見える車窓は犠牲になっている。山が海に落ち込むほど、平地の少ない越後・越中間では当然のなりゆきである。旧線跡は自転車専用道として整備されており、この道もいずれ自転車で走ってみたいと思っている。


 かつて関所の置かれた宿場町である市振を過ぎて、列車はいよいよ富山県に入り、雄大な立山連峰を眺めているうちに、庄川を渡って、終点の富山には14:08に着いた。明日はこの駅から高山本線に乗る予定だ。
 高岡へ向けて乗り換える14:23発の列車(436M)は、なんと今乗ってきたのとまったく同じだった。ますます、高岡まで直通してくれよ、という思いが高まる。そして高岡には14:43に到着した。
 高岡は加賀前田利長の隠居城の城下町として発達した町で、その後幕府の一国一城令により高岡城が破却された後も、加賀藩によって殖産、保護され発展し、今なお千本格子の町家や土蔵造りの商家が多く残る富山県西部の中核都市である。最近は万葉線のLRTが話題となっている。ちょうど駅改札を出ると、その赤い万葉線LRTが走り去っていった。しかし今回は残念ながら乗る時間がない。

 さて、ここから南と北にそれぞれ延びる2つの支線に乗るのだが・・・。城端線と氷見線のどちらか乗ろうか、それが問題だ。いずれも盲腸線なので、乗っていった列車は終点で折り返して戻ってくるのは同様だ。接続の良さと、日没前に景色の良さそうな氷見線を先に制することにした。氷見線は高岡駅の端にある頭端式ホームの7番線から14:58に出発する。小豆色に白のラインのシックな車両は、両開きドアのキハ47系2両編成(541D)ワンマン運転だ。氷見線はかなりの乗車率で赤字路線ではなく、ドル箱路線だ。休日のこんな半端な時間帯にもかなり混み合っていた。

 この氷見線の歴史に軽く触れると、明治33年(1900)に富山県で最初の鉄道である中越鉄道によって建設された路線であり、大正9年(1920)に国有化され氷見線となった。さらに、現在は高岡駅構内で分断された西の城端線ともともとは1本だったという。そんな気がしていたのだ。

 しばらく高岡市街を走る氷見線は、越中中川駅で乗客の大半を占めた学生を降ろし。やがて富山の臨海工業地帯へと入っていく。能町駅は北陸有数の貨物駅でもあり、貨物取扱量が減った現在もその面影を残している。小矢部川を渡り、古代越中国の国府が置かれ、江戸期には北前船の港として栄えた伏木港のコンビナートから港町の古い家並みを抜け、海のギリギリを走る越中国分〜雨晴間で氷見線のハイライトを迎えた。車窓からは海しか見えず、あたかも海面の上を走っているかの錯覚を受ける。男岩、女岩などがある景勝地だ。
 そして新川を越えると、能登半島富山側の玄関口であり、能登有数の港町でもある終点の氷見駅に到着した。時間は15:27。高岡駅からわずか16.5キロの終点駅である。今乗ってきた氷見線は折り返し(540D)となる。出発は15:34なので、8分ほど時間はある。氷見は過去に訪れているので、あえて駅周辺を散策する事も必要性も無く、ホームでの撮影に専念した後、再び同じルートで、16:05に高岡駅に戻ってきた。
 


 次に乗る城端線の接続16:33まで少し時間があるので、駅の立ち食いソバで小腹を満たす。高岡では「ちゃんぽん」と呼ばれるソバとうどんがあたかもピザのハーフ&ハーフのようにになった名物があるが、それを思い出した時にはすでに遅く、一杯のかけそばが上がってきた。「ちゃんぽん」は次回に食することにしよう。


 
 
Page1■ 旅の始めは大糸線
page2■ 中央本線・大糸線で本州横断1
Page3■ 北陸本線で富山入り・氷見線に乗る
page4■ 一日の終わりは城端線
page5■ 高山本線で本州横断2
page6■ 篠ノ井線で姨捨駅をめざす
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