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 熊谷駅に着いたが、SL「パレオエクスプレス」はすでに出た後だった。ホームで待つと、今朝乗った有料急行「秩父路」が折り返して戻ってきた。急行のスピードと停車駅の少なさは確実に蒸気機関車を追い抜くであろう事を確信して、急行券200円を購入して乗り込んだ。

 雨脚は強くなる。山々は綿のように立ちこめる山霧に被われ、ぷんぷんにマイナスイオンを放出している。見えないけど。予想どおり、急行列車は途中でSL「パレオエクスプレス」を追い抜き、その全貌を垣間見た。
 1944年に登場したC58蒸気機関車が国鉄12系客車を引いていた。客車は落ち着いたグリーンに黄色の帯でとても品がよかった。それでも聞くところによると、窓を開ければ顔はすすで真っ黒になるというハードさは健在だ。ちなみにパレオエクスプレスのパレオとは、2000年前に秩父地方に棲息していたと言われている幻の海獣パレオパラドキシアの事だという。はあ。

 急行「秩父路」は今日最初に乗った御花畑駅の一つ先の影森駅止まり。ここで三峯口行きの各駅停車を待つ。雨はいっそう強くなる。
 暫くしてやってきた、旧101系通勤列車内はかなり湿度が高かった。ある意味ローカル臭ムンムンなので旅情的にはこれもありなのだが、天井の動かない扇風機を眺めていても仕方がないので、車窓を楽しむ。車で何度も通る国道をいつもと違う目線で眺める楽しさがあった。終点の三峯口に到着する直前で、隣りの先頭車両が冷房車である事を知る。

 雨に直接打たれる自己演出の為に、傘はあえて持参せず、ポンチョをかぶる。駅前の立ち食いそばの香りが空腹には辛かったが、SLの到着をひたすら待った。奥秩父は何度も訪れているが、駅のあたりは初めてである。
来るときの車窓から眺めたかぎりでは、秩父駅より西の駅前には食堂らしきものは一切無いようで、本日の目的である三峰口になにもなければどうしようかと心配だったが、とりあえず駅には立ち食いそば確認され、駅正面にはちゃんと立派な食堂があった。ここでいう立派とは綺麗なという意味でなく、旅情ムードを満喫できるという意味で、寂れた雰囲気である点はこの手の場所ではあたりまえである。

 なにより伝統的様式の古い旅籠風建築(おそらく参詣宿だろう)である点が非常にラッキーだった。
ようやく、ふりしきる雨の中を入線してきた「パレオエクスプレス」を写真におさめ、一目、駅前の旅籠、いや食堂へ駆け込んだ。一階はガラガラであったものの、そそくさと二階へ。千本格子から見下ろす三峯口駅と、その背後に 広がる霧に被われた幻想的な風景を肴に、酒をちびりびりと始める。

パレオエクスプレスからどっと降り立った乗客は、大半が電車で引き返し、残りはバスで三峯山へ向かったようで、駅前の人だかりはあっという間に捌けた。一階はわずかに混み合ってきたが、二階は独占である。二本目に手をだした地酒の秩父錦はおそらく「超」の付く普通酒であろうが、そんな事は今この時に限っていえば、もはやどうでもいいのである。この千本格子から眺めるな幽玄な景色と、自然の香りに酔いながら、至福の時をすごした。
 味噌田楽と天ぷらにそば、しかも、ほろ酔いで文学など読んだりしながら時は過ぎていく。今日が土曜日で、ここが旅籠いや駅前旅館も兼ねていたなら、確実に宿泊の手続きを踏んでいたであろう。

 しかし、非情にも時間は過ぎ、シンデレラの様に時計が気になる。我が自宅への到着時刻を逆算して、しぶしぶ奥秩父の食堂を後にした。1000系列車に揺られ、御花畑駅から西武秩父駅まで辿り着く。結構疲れも出てきたので、飯能駅乗り換えてロングシートの通勤列車でダラダラ帰路につくのも億劫だったので、電車を1本遅らせ、池袋直通の快速急行まで待った。飯能までは各駅でその先は終点池袋まで快速運転。幸い私が降りる駅はちゃんと止まるのが良い。つまり自宅まで直通な安心感があるのである。ああ、秩父って近いなと改めて感じた。

 西武4000系は101系の台車・制御装置・主電動機などの機器を流用しつつも東急車輛製造で新造された西武秩父線専用車両である。車内はセミクロスシートで半自動ドア、トイレ付きと、地方ローカル線の標準的仕様である点が魅力であるが、ライオンズカラーはそろそろやめにしてもらいたい。
 池袋ー秩父直通は上りだけでは無く、下りもいくつかあるので、次回はこの車両でくる事にしよう。
予想より早く、日没前には自宅に着くことが出来た。

 
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