一路一会蔵と酒の國へ>ちょっと日本酒の話

  

  日本酒ができるまで

 

行程

 

解説

 

備考

 

 

 

 

 

酒米の精米
(精白)

 

玄米を削って白米にします。
食べるお米で美味しい部分は、お酒造りでは雑味になるので、3割から半分近くまで削り、芯の部分のみ使います。
削れば削るほど原材料が少なくなるので、お酒の値段も上がります。
お酒のラベルにある「精米歩合」がこれ。

 

普段食べているお米の精米歩合は95%前後です。
お酒では75%くらいから60%くらい。
吟醸酒クラスになると50%から35%近くまで磨くものも。

 

 

 

 

放冷
(枯らし)


 

精米されたお米を冷まします。
精米の摩擦熱は半端ではなく、また米自体の水分も奪われています。
この作業を現場では「枯らし」と言っています。

 

吟醸酒クラスまで磨くと、自然冷却さ
せ、失われた水分を取り戻すのに1ヶ月近くかかる事も。

 

 

 

 

洗米

 

いよいよお米を研ぎます。
洗っている間もお米は水分を吸収しています。
これも計算に入れておかなくてはなりません。


 

 

 

 

 

 

浸漬


 

洗ったお米を水に漬けて、水分を吸わせます。
洗米でも書きましたが、お米の吸水量は酒質に大きく影響するので、厳密に時間を計ります。

 

水からあげた後もお米は水分を吸収し続けるので、それも全て計算にいれなくてはなりません。
ストップウォッチで計る現場も。

 

 

 

 

蒸米
(蒸きょう※)
※食へんに強

 

お米を蒸します。
麹カビ定着前の腐敗防止と、糖化・発酵を良くする為に、表面は堅く、中は柔らかくなるように計算して蒸します。 「麹米」と「掛米」を作ります。

 

蒸しが終わる事を
「甑倒し・こしきだおし」といいます。

 

 

 

 

麹造り
(製麹)


 

蒸したお米に麹カビの胞子を振りかけて育てます。
雑菌は禁物、半導体工場なみに厳しく隔離されて行われます。
酒造りのベースで 「麹米」といいます。後にもろみを量産する行程で使用する蒸米を「掛米」といいます。

 

麹米と掛米を、それぞれ違う種類の好適米を用いる事もあります。

 

 

 

 

もと造り※(酒母)
酒へんに元


 

酵母を培養して増やします。
麹と水を混ぜて、酵母を加えたものを酒母または
「もと」 といいます。まさにお酒の母親です。
この酒母には空気中の雑菌や自然酵母が入り込んで来るので、乳酸を生成もしくは添加してそれらを駆逐・死滅させます。
工業乳酸を添加したものを「速醸もと
自然乳酸を生成する為に、米をすり潰す作業を延々行ったものを「生もと」と言います。
また、生もと造りとほぼ同じながら、米をすり潰す作業(山卸)を廃止した製法を「山卸廃止もと」略して「山廃もと」といいます。


 

協会酵母はたくさんの種類があり、どの酵母を使うか、もしくは組み合わせによってお酒の味が決まります。
しかし酵母は微生物なのでどんどん進化・変化し、常に同じものは生まれません。
分類された姿に近いものを、少量づつ分けてもらい、蔵で増やします。


生もと造り
山廃造り

 

 

 

 

もろみ



 

先ほどの酒母(もと)に掛米と麹を加えます。
白濁して泡立ちのある状態。ここで発酵が進みアルコール化が進みます。
しかし酵母は、非常にデリケートで環境が急激に変わると低下・死滅してしまいます。
そこで、大体3回くらいに分けて、倍数の蒸し米と麹を加えていきます。(例えば7kg造るとしたら、1kg・2kg・4kgと徐々に慣らしながら増やしていきます)
3回の行程は「三段仕込み」と呼ばれ、それぞれ名前がつけられています。また各工程の間に約一日、休息日を開けることを「踊り」といいます。

一回目「初添・はつぞえ
    踊り
二回目「中添・なかぞえ
    踊り
三回目「留添・とめぞえ

20~30日間かけて発酵させていきます。

 

「もろみ」の行程は基本的にこの三回に分けて行う「三段仕込み」しかありません。
しかし、これを「五段」「十段」に分けて行う事もできますが、意味はほとんどありません。
「手間を掛けた感」を出すためのイメージ戦略でしょうか?

 

 

 

 

アルコール添加


 

醸造アルコールをゆくりと加えていきます。
アルコール添加は水増しである「増造酒」の悪いイメージがありますが、江戸時代にさかのぼる伝統的な行程です。当時は柱焼酎(米焼酎)を使っていました。
初期のアルコール添加の目的は防腐目的でしたが、今は「香りの引き出し」と「味の軽快化」です。
最近好まれる「淡麗」や「辛口」それに「香り」には必要な行程です。

 

醸造アルコールを添加しないものを
純米酒」、添加したものを「本醸造」と分類します。ただし添加する量の上限は決められているので、それを上回ると「普通種」のあつかいになります。

 

 

 

 

上槽
(じょうそう/あげふね)
(搾り)

 

いよいよ搾って「生酒」が出来上がります。
搾った後に残った固形分が「酒粕」です。
今は圧搾機や遠心分離機で搾られますが、酒粕の粒が大きい吟醸酒は昔ながらの「槽搾り」「袋吊り」などの自然抽出方法で行われます。

 

ビール名にもある一番搾りを
あらばしり」といいますが、搾らずに自然に垂れ出たものをいいます。
二番搾りを「中汲み」(なかぐみ)
といいます。

 

 

 

 

滓下げ
(滓引き)

 

うっすらと濁った「滓」(おり)を沈殿させます
搾りたての状態では炭酸ガスと酵母やデンプン・蛋白質を多く含んで、濁った黄金色をしている他に雑味もあり、まだ野趣的な状態です。
濾過へ進む前に大まかな滓の沈下を待ちます。
ちなみにこの行程で生まれる「生酒・なましゅ」とは製品である「生酒・なまさけ」とは別のものです。

 

最近人気のある「無濾過生原酒」はこの滓下げ後の上澄みを瓶詰めしたもの。

ちなみに市販の「にごり酒」はこの状態のお酒ではありません。

 

 

 

 

濾過

 

さらに濾過して無色透明に近づけます。
「フィルター」の他、昔がらの「活性炭」、最近は
「珪藻土」などが用いられます。
濾過によって香りや風味も失われるので、単純に細かいフィルターで濾過をすればよいわけではありません。ここでも最終商品に合わせて慎重に行われます。昔は炭屋という専門技師がいました。

 

最近は無色透明よりも、自然色のついた酒が好まれる傾向にあり、濾過の方法も多種多様です。
ただし火入れしないで出荷する「生酒
は、高精度なフィルターで雑菌を完全濾過します。

 

 

 

 

第一火入れ
(発酵停止)

 

加熱殺菌して酵母の活動を止めます。
生酒の状態ではまだ酵母が活動し、活性酵素や腐敗をまねく非落菌が潜伏している可能性がある為、一度軽く低温加熱殺菌して、酒質を固定します。

 

生酒の状態で貯蔵し、出荷前に火入れした酒が「生貯蔵酒」、別名「先生」
(せんせい、ではなく、さきなま)

第一火入れのみをして貯蔵・出荷する酒を「生詰酒」といいます。別名「後生」

 

 

 

 

貯蔵

 

酒の旨み・深みを引き出す為に貯蔵庫で熟成させます。
ウイスキーやワインではお馴染みの行程。
さきの第一火入れを行わないで熟成させる「生貯蔵酒」では、ゆるやかな発酵(調熟)が進んでいます。
ちなみに6ヶ月以上(製造年度以降)まで熟成させて出荷した場合、法律上は「古酒」の扱いになります。

蔵のこだわりで、加水・第2火入れ・瓶詰めして冷蔵貯蔵する場合もあります。

 

製造年度は7月から翌年6月までの期間。

6月を越し、夏まで熟成させて秋に出荷する酒を「ひやおろし」といいます。
原則第二火入れをしない「生詰酒」で、法律上は「古酒」、慣習上は「新酒」です。
「秋あがり」とも。

10年・20年寝かしたヴィンテージ古酒はブランデーにも似た日本酒の別境地です。

 

 

 

 

割り水
(加水調整)

 

加水調整して税法上のアルコール度数まで下げます。
19~20度ある「原酒」を15~16度に落とします。度数によって税率が違うだけで、14度でも17度でも構いません。税率分価格に反映されます。

 

※原酒も1%未満の加水は認められています。

 

 

 

 

第二火入れ
(殺菌)

 

最後にもう一度加熱殺菌して出荷を待ちます。

 

 

 

 

   

瓶詰・商品

 

瓶詰めしてラベルを貼ってできあがりです。