安来市の中心市街から松江方面へ約４ｋｍ。平成の大合併前の旧安来市内で２番目に大きな市街地を形成する荒島町には、同市で２つ目の山陰本線の荒島駅が置かれている町でもあります。中心市街は山陰道の旧道沿いに展開し、ここから南へ広瀬街道が分岐点していることからも、交通の要衝として栄えた町のようですが、山陰道の正式な宿場町ではありません。
広瀬街道は中世から近世にかけて月山富田城の城下町として栄えた広瀬町を結ぶ街道ですが、この街道にほぼ並行して昭和３年に広瀬鉄道が開通します。そして山陰本線と連絡する起点駅がこの荒島町にある荒島駅でした。広瀬鉄道は太平洋戦争やその後の経営難から一畑電気鉄道の傘下に入るものの、赤字に歯止めは掛からず昭和６０年に廃止されてしまいました。
ＪＲ荒島駅は国道９号線に背を向けて、旧広瀬街道沿い側に向いています。駅前を通る旧街道沿いにも若干の家並みが見られますが、今回紹介するのは山陰本線の北側、中海に面した旧道沿いの地区です。荒島駅周辺には工場や事業所が進出し、住宅地も広がりつつあるようですが、こちらの旧道沿いの地区はほぼ完結した状態にあり、国道９号線からも離れていることもあって、静かな雰囲気に包まれています。
山陰道の旧宿場町には、往時の家並みがほとんど残されていない町も数多くありますが、宿場町ではなかったこの荒島町には、山陰道では稀少なほどの家並みが残っていて驚かされました。
中海と国道９号線のバイパスに挟まれた閉塞地であった為に、その後の市街地の発展が荒島駅の南へと拡大していった事から、「旧中心街」が残される事になったものと思われます。
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